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計画立てるだけじゃダメ?自宅学習に必要な3つのプロセスー自己調整学習 予見段階編ー
2023.04.27
子どもが家で自習できないというのは、保護者の方の共通の悩みではないでしょうか?
個別教育舎が行った2021年の調査によれば、新型コロナウイルスの流行で自宅学習が「以前もあったが、より増えている」「以前はなかったが、するようになった」と回答した割合は小学校高学年から高校生で35.7%に達する一方で、子どもの自宅学習にストレスを感じていると答えた保護者は51.5%にのぼっています。
コロナが収束に向かう今後も、ICT機器の普及などで自宅学習の時間が長いままとなることも予想され、自宅で自分から学ぶ仕組み作りを子どもと保護者が一緒に考えていくことが必要と言えるでしょう。
自己調整学習が自宅学習の仕組みづくりのヒントに!
そうした仕組みづくりを教育心理学の視点から考えた研究に自己調整学習があります。
自己調整学習は1980年代半ばからアメリカを中心に研究が発展した分野で、ZimmermanとMylanによれば以下の3つのプロセスからなるサイクルが学習活動の中心になっています。
- 予見段階:課題を分析、学習目標を方法を決める
- 遂行段階:学習中の自分を観察、結果を記録する
- 自己内省段階:学習の結果を評価する
今回の記事は仕組みづくりの第一歩、学習を始める前の予見段階に注目して今日から使える自宅学習でのコツをまとめました。
- 学習の記録をつける
- これまでの学習法を継続と結果の点で評価する
- 目標を設定し方法を計画する
計画前に、目標の問題点を理解しましょう!
1.学習の記録をつける
私たちは次のテストが控えているとついつい先に計画を立ててしまいがちですが、特に自己調整学習の1サイクル目では、自分が今どのように学習を進めているのかが理解できていない場合がほとんどです。その状態で自分の課題が明確でないまま計画を設定すると、自分にあった目標を考えることなく「計画倒れ」になる恐れがあります。
まずは、曜日のサイクルが分かる1週間で自宅学習の記録をつけてみましょう。Zimmermanらは「何をするか」の学習目標ごとに下記の要素を学習の記録として推奨しています。なお、ここでの学習目標とは「1時間で算数のテキストを1ページ解く」といった何を学習するかについて達成したかがはっきりするアクションのことを指します。
- 始めた時間、かかった時間
- 学習環境(どこで?だれと?気を散らすものは?)
- 自己効力感
上記はそれぞれ学習の規則正しさ(始めた時間、かかった時間)、学習の環境、学習の質(自己効力感)を意味していますので、学習目標を総合的に評価することができます。
自己効力感は聞きなれない言葉ですが、ここでは学習の結果に対する自信の度合いを考えた学習の結果の予想、つまり結果の予想と自信の度合いの合計を表しています。
例えば、週に一度10点満点の小テストに向け学習を行っているAさんがいるとしましょう。Aさんは学習一日目、1週間後のテストで7点をとると予想していますが、7点を本当に取れるかはあまり自信がありません。自信度をあまり自信がない:-1, 自信がある:0, 絶対に自信がある:+1とつけるとすれば、Aさんの一日目の学習の自己効力感は7+(-1)で6となります。そして実際のスコアが7点であった場合、Aさんの予測と実際の結果にはずれが生じていることが分かります。
この自己効力感は、ただ結果のスコアの記録をつけるだけでは分からない自分のスコアの予測の正確さを測ることができます。計画を立てる段階でこの予測の正確さを測ることで子どもが悲観的になってやる気を失ったり、過剰な楽観主義で準備を怠ったりすることを防ぐことができます。自己効力感を測るためには1週間ごとのテストがあることが望ましいので、学校や塾などで小テストがない場合はテスト用の教材を用意するといいでしょう。
2.これまでの学習目標を継続と結果の点で評価する
1週間の記録を元に今の学習目標を評価してみましょう。その際の観点は1.でも出てきた学習の規則正しさ、学習の環境、学習の質の3つです。この3つの観点うち改善の余地がありそうなものが見つかれば学習目標を再設定する必要があるといえるでしょう。
3.目標を設定し方法を計画する
いよいよ目標設定と計画の段階です!目標は、2.で改善点が見つかったら、新たな学習目標を設定してみてください。改善策には取り組む教材や、学習する環境を変えるなどが考えられますが、改善策が思いつかない場合は学校や塾の先生に相談することをおすすめします。
まとめ
いかがでしたでしょうか。学習の計画を立てる際は、まず子どもが自分なりに考えた目標のどこにつまずいているのか、学習の規則正しさ、学習の環境、学習の質から一緒に考えてみることが重要です。計画を立てる前に今の学習目標の問題点を子どもが実感することでその子にあった新しい学習目標を設定することができますし、子どもも納得感をもって新しい学習目標に取り組むことができるでしょう。
(参考)
自己調整学習研究会(2012)自己調整学習 理論と実践の新たな展開へ, 北大路書房
バリー・J・ジマーマン, セバスチアン・ボナー, ロバート・コーバック 著 塚野州一, 牧野 美知子 訳 (2008)自己調整学習の指導 学習スキルと自己効力感を高める, 北大路書房
EdTechZine編集部(2021)新型コロナ禍での自宅学習時間が増加し、ストレスを抱える子ども が5割超に(https://edtechzine.jp/article/detail/5675)(最終確認日:2023年3月18日)